【読書レビュー】黄砂の籠城 上下巻 日本に生まれてよかった、気高く潔く、どこまでも尊い





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北京で起きた大事件で活躍した日本人たち



連合軍を率いた柴五郎中佐の活躍によって、多くの人たちが生き延びることができた1900年の北京。柴五郎は世界で初めて称えられた日本人とされる。

そういったところから、現在のグローバル社会で活躍する自分たちへと照らし合わせて、ぼくら日本人の中にある本質といったものを読み解いていくのが、おもしろい読み進め方だ。








義和団事件ってなんだったっけ?


この程度の知識で読み始めていいだろうとぼくは思うこの歴史小説「黄砂の籠城」は、著者松岡圭祐の世界に完全に引き込まれる。

1900年、明治33年の北京で起きた列強各国から侵略を受け、それに抵抗し、領土を取り返すために結成された、義和団と十一か国の連合軍との闘い。

連合国を率いたのは新任の駐在武官、柴五郎率いる日本人たちだった。

日本人の本質が浮き彫りになった歴史上の一大事、と言われているのはどうゆうことなのか。

この小説は上下巻なのだが、「次はどうなってしまうんだろう」とハラハラドキドキさせられながら一気に読み進めることができるので、長編だと思って身構える必要はないと思う。











著者 松岡圭祐


松岡圭祐は1968年に、愛知県で生まれた作家である。

デビューは1997年。

他の歴史小説では、「八月十五日に吹く風」や「黄砂の進撃」などが人気で、ぼくも読んでいる。









小説の内容



太平洋戦争開戦の41年前に起きた、「義和団事件」を題材にした歴史小説。

列強による侵略を受けた清国、農民を中心とした民衆が立ち上がり結成した義和団が領土を取り戻すべく列強に挑んだ排外的農民闘争だ。その闘いの中にあった日本軍の目覚ましい活躍ぶりを取り上げた小説である。

十一か国を率いた柴中佐は、果たして漢人を救い出すことができるのか。

東交民巷を包囲する、20万超の義和団から逃れるすべはあるのか。

ハラハラドキドキが止まらない、最後まで一気に読み進める歴史小説だ。





ぼくのように海外で暮らしている人は特に考えるんじゃないかな、日本人としての本質みたいなものを。

そういったことを考え始めた時には歴史を読み解くと、ヒントをもらえたりするんだよね。



われわれのためだけではない。日本とゆう国に生きる子や孫のために。世界に認められ、文化が存続し、人々の幸せな暮らしと平穏が保たれる近代国家となるためにここで戦う。ー著書、黄砂の籠城より抜粋


100年以上前の日本人が近代国家である現代を見据えていたのかは定かではないが、こういった言葉は今を生きるぼくらも意識するべきだと思う。

戦いはするべきではないが、日本人として世界でどうやっていくのかなどのヒントがもらえる言葉だと思う。




穏やかで、自然を愛で、伝統を重んじ支え合う。-著書、黄砂の籠城より抜粋


とっても静かで優しい表現で、ぼくはこれが日本人の中にある本質なんだと思う。

世界中の人たちと肩を並べ、厳しい競争社会でありながら、ぼくら日本人はいつでも穏やかな民族であり、ずっと大切に守っていきたい自然と伝統、文化がある。

そうところに誇りを感じることができる一文である。








まとめ



黄砂の籠城上下巻は合わせて650ページにも及ぶ長編小説なのだが、松岡圭祐の世界に引き込まれ一気に読んでしまった。

映画でも見ていたのかと思うほど、読み終わった今でもあの情景がはっきりと頭の中に残っている。

少し誇張された表現が多々あったように思いながら読んでいたのだが、

外国人が日本人の気真面目さを称える描写は、当時籠城に参加していた人々の日記に基づくもので、物語上の誇張ではない。-著書、黄砂の籠城より抜粋

と記されているので、そうとばかりは言えないのだろう。


ぼくは海外で生活し、いろんな国の人たちと一緒に働いているからこそ、日本人として意識することがよくあるのだが、自分たちの中にある本質とゆうものを読み解くにはちょうどいい小説であったと思う。

もちろん海外在住の人だけにおすすめではなく、日本で日本の文化に寄り添いながら生きている日本の皆さんにもおすすめである。

明治維新後に起きた事件から、今の自分たちへ何を想像してみるのか。

そういった視点で読むのが面白いと思う。



絶対おすすめの歴史小説である。





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